概要
ストーリー


それは、人に秘められし可能性の力──
2042年、我々とは少し異なる歴史を辿った日本。政府が開いた会見は、世間を震撼させた。帝都大学教授、矢羽部 智博が語ったのは、超能力の実在という、あまりにも荒唐無稽な話だった。
──Gene Identified by Fantastical Thinking. -空想により特定された遺伝子-
通称、GIFTと呼ばれる遺伝子が活性化した者たちは超能力を発現し、街では様々な事件が起こり始めていた。人智を超えた力により、世の中を脅かす彼らに危機感を抱いた国防軍は、能力者を管理下に置くため、ある組織を発足する。


<<超能力関連技術総合研究所 第4課>>
彼らの任務は──能力者の”回収”。超能力を以って、超能力を制すこと。自らも超能力者である4課の面々は、助け合い、時にはぶつかり合いながら、今日も任務に奔走する。運命の歯車は廻りだした。
今、それぞれの想いが一つの物語を紡ぎ出す。
──そして、世界は愛を知る
ゲームシステム
ルート選択後は一本道のシナリオ


本作はまず次のどちらかのストーリーを選んで物語を進めることになる。
①追想編(柊 六花) :六花が記憶を失ってからの物語であり、時系列としては現在。
②追憶編(一ノ瀬 國仁):六花が記憶を失うまでの物語であり、時系列としては過去。
シナリオ攻略順序だが、特にこだわりが無ければ作者も推奨する①追想編から始めることをお勧めする。②追憶編から始めると時系列順で把握しやすいというメリットはあるが、①追想編から読めば何故あのキャラクターはあのような行動を取ったのだろうといった、あとから真実が分かる面白さがあるからだ。
なお、一度ルートを選んでしまえばあとはほぼ一本道のシナリオである。後述するGIFTの使用で選択肢が発生するが、失敗するとバッドエンド直行なのでやはり一本道シナリオと言って差し支えないであろう。
そして、両ルートを完走することにより事態は新たな局面へと…。
超能力(GIFT)の使用による選択肢分岐


物語が進んでいくと各主人公に与えられた超能力(GIFT)の使用を迫られる選択肢が発生する。右上のGIFTボタンを押したあと、後述のどのGIFTタイプを実行するか選択するといった具合だ。追想編(六花パート)では下記の通り4つの選択肢から選択することになる。
【物理】いわゆるテレキネシス。手を触れずにモノを動かしたりと、物理現象に干渉することが可能。
【属性】水や炎、雷や風といった超常現象を引き起こすことが可能。
【精神】人の精神に干渉し、心の中を読んだり、語り掛けたり、操ったりすることが可能。
【使用しない】むやみやたらにGIFTを使わないというのも選択肢の一つだ。
なお、多くは使用したGIFTが誤り、もしくは使うこと自体が不正解であった場合、容赦なくバッドエンド行きとなる。しかし心配はご無用。直前の選択肢からやり直すことが出来るので焦ってセーブする必要は無いのだ。ちなみにオートセーブ機能も備わっているので、積極的に記録をセーブしなくても問題無い。
評価したい点
複雑に絡み合う伏線と物語の真実


本作で評価したいのはノベルゲームよろしく、やはりシナリオである。
突如人類に発現した超能力(GIFT)、超能力を持つ者ギヴン、国防軍配下の能力組織第4課。敵対するテロ組織(楽園同盟)。そしてカギを握る少女リリスとGIFTの生みの親矢羽部博士…。彼らがぶつかり合い、それぞれの想いが収束し、一つの物語を紡ぎ出していく。その総プレイ時間は10時間以上と、フリーゲームとしてもノベルゲームとしてもボリューム十分な内容となっている。
本作が普通のノベルゲームと異なるのは、ゲーム開始時から攻略ルートが2つ用意されているという点だ。この要素が物語の謎や伏線づくりに一役買っている。繰り返しになるが、ルート選択では追想編(六花パート)から遊ぶことをオススメしよう。ネタバレしない程度に書いておくと、現在にあたる追想編から少し遊んでみると次のような謎(伏線)がたくさん提示される。
〇なぜ柊六花は戦闘能力低いわりに4課配属で重宝されているのか。
〇なぜ柊六花は一ノ瀬國仁に惹かれるのか。
〇なぜ能力組織4課には要員が少なく少数精鋭なのか。
〇なぜリリスが柊六花を強く敵視しているのか。
過去にあたる追憶編は言ってみればその答え合わせ。そういった謎が解けていくカタルシスを楽しめるのが本作の良いところだと言えよう。そして両ルートを完走してからが物語の本番だ。
──そして、世界は愛を知る/超能力ラブストーリー


能力者組織とテロ組織との戦いというシナリオ都合により、当然のごとく超能力バトルも発生する。しかしそれは実は一つのパーツに過ぎず、あくまでも本作でのテーマは『愛』である。そして本作はそれをしっかりと描き切っている。
確かに本作はプレイ時間は長めなので腰を据えてじっくりとプレイする必要がある。それでも、それだけの時間をかけた積み重ねもあり、物語のクライマックスからエピローグまでの流れは演出込みで本当に素晴らしい。どうか最後まで読み進めて欲しい。あなたと世界は真の愛を知ることになるだろう。
『これは、ギャルゲーでも、乙女ゲーでも、SFでも、世界系でもない。純粋なる愛の物語なのだ』
———キャッチコピー By アクアポラリス———
と、ここまで紹介しておいてなんだが、正直に言わせてもらうと実は筆者は本作のシナリオの全てを手放しで賞賛していなかったりする(総合的には満足している)その辺は気になった点にて後述しようと思う。
補足:ストーリーの骨子には元ネタあり


ここまで読んで勘付いた人も居るかもしれないが、本作のルート選択の仕組みはとある商業作品のオマージュである。その作品の名は『ルートダブル』監督・原案はinfinityシリーズ1で有名な中澤工氏である。シナリオはそれぞれの主人公毎に分けられており、レスキュー隊員である笠鷺渡瀬を主人公とした「√After」(以下、√A)、高校生の天川夏彦を主人公とした「√Before」(以下、√B)が用意されている。
少し古い作品ではあるが高評価を博している作品であるため、重厚なシナリオゲーを堪能したい人はぜひ手に取って遊んでいただきたい(と言いつつ筆者も未プレイである…時間が足りない。)
商業クラスのOPムービー/タイトルBGM


本作にはフリーゲームには珍しくOPムービーが付いているが、これもまた出来栄えが大変素晴らしい。
それもそのはず、オープニングテーマの『Recollect:EDEN』は作曲、歌唱共に商業で名の通った文字通りのプロフェッショナルに外注しているのだ。作曲は数々のアニソンを手掛けられている『Studio☆BooBee』氏。歌唱はCMソングやFGO、オクトラなど多数の名曲を歌われている『國土佳音』氏となんとも豪華である。本掲載記事のトップからOPムービーを視聴できるので是非一度覗いてみてはいかがだろうか?
驚くのはそれだけにとどまらず、本作のメインテーマ(タイトルBGM)の楽曲提供は『削除』氏である。こちらも同人音楽制作レーベルに所属しBMSや音楽ゲームへの楽曲提供を行っている。こちらもご多分に漏れず良曲なのでぜひプレイを始める前に少しだけ時間を置いて聴き入っていただきたい。失礼を承知で、率直に一曲だけ他のBGMとレベルが違う。
こうして書き並べてみると、どれほど本作に製作費がかかっているかは推して知るべしと言ったところだろう。それでもフリーゲームで配布することに拘ったアクアポラリス氏に拍手を送りたい。
気になった点
シナリオ終盤での疑問点は幾つか有り
評価点の項でも少し触れたが、本作のシナリオは素晴らしいものの、幾つか腑に落ちない点は残っていたりする。いかようにも解釈することは可能で致命的とまでは言わないが、人によっては許容しきれない(ご都合)ものと捉えられてしまうかもしれない。参考までに私が感じた主な疑問点をネタバレ込みで書き残しておこう。ネタバレを気にしない人や誰かのプレイ後の感想共有になれば幸いである。
完全ネタバレ注意!(クリックで展開)
(1)なぜ人工授精という選択をせず手間のかかる自然交配を選んだのか
最も疑問に残ったのがこの点。辰巳は高齢で残された時間が少なく焦っており、様々な人体実験を施して倫理観も崩壊しているのだから自然交配に拘るのは不自然ではないか?加えて六花は戦闘力が高くないため、もし彼女が死んでしまえば元の木阿弥である。能力者の始祖と言える六花を戦場に置くリスクの方が明らかに上だし、実際のところ下手をしてバッドエンドで死亡する展開もあった)更に辰巳は能力持ちで記憶を弄れるのだから、都合よく記憶を改ざんすれば人工授精を選ばずとも、半ば強引に自然交配に持ち込むことも可能だったように思う。もちろん自然交配を選んだからこそ、このようなドラマチックなシナリオに繋がったのだから、このあたりの納得いく理由付けがもう少し欲しかった。
(2)六花と國仁の性格の違い
もともとはこの二人はアダムとイヴとして研究所で実験に使われていた殆ど自我の無い状態のはず。それが4課配属時はお互い全く異なる性格付けがなされている。この点について特に言及は無かったように思えるが、どうせならお互いラブラブな設定を作り込んで4課に配属させれば良かったのでは…?
(3)國仁にギフトが発現した理由
作中では精神力が高いからだと解説されていたが、正直そうは思えない。本当に精神力が高いのなら、親族を失い死にたいと思いながら無為な毎日を過ごす人生にはならないと思う。事実そのようなどうしようもない人間だからこそ実験対象にノミネートされ実験を受けることになっているし…。
(4)辰巳にギフトを発現させた理由
ちょっと都合が良い展開だと思ったのが正直なところ。彼に能力を発現させたシナリオ的な都合は六花と國仁の記憶を改ざんすることだと思われる。それなら回収してきた能力者に指示(脅迫)してやらせるなどした方が無理の無い流れだったように思える。
(5)能力のうち物理と属性の扱いがやや微妙
本作のカギは超能力なのだけれど、シナリオ面での存在意義は実質、精神ひとつだけで事足りている。あくまで恋愛がメインでバトル描写も控えめなため、他の能力がちょっと霞んでしまっているようにも思う。
超能力バトル的な要素はやや薄め
能力者組織に属する主人公サイドとテロ組織との戦いというシナリオの都合上、当然のごとく超能力バトル的な展開は用意されている。しかし、評価点の項でも述べてはいるが、あくまでも本作のメインテーマは『愛』である(実は作者としてもバトル要素はおまけと思っているらしい)そのせいか、バトルシーンについてはあまり記憶に残らなかったというのが正直なところである。演出面に少し物足りなさを感じてしまった。
総評
キャッチコピーの通り、本作はギャルゲーでも、乙女ゲーでも、SFでも、世界系でもない、シンプルに純粋なる愛の物語を楽しめる一作だ。シナリオ上のツッコミどころが無いわけでも無いが、総合的には十分に楽しめるし、クライマックスシーンの演出は必見なので是非そこまで辿り着いていただきたい。時間が無い人は最高にクールなOPムービーやタイトルBGMだけでも視聴していただけると幸いである。
ゲームプレイリンク
公式サイト
フリーゲーム夢現(ダウンロード版)
ノベルゲームコレクション(ブラウザ版 & 多言語)
脚注
- 代表作は『Ever17』ADV史に残る傑作としてその名を刻み、後にフルリメイク作が発売されるほどの人気を獲得した ↩︎








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