『魔法少女まトち』生きることに絶望した少女の、願いへと奔走する中編鬱RPG

〇エネミー、キャラクター、BGMすべて自作!
〇他に類を見ない独自性のあるシナリオ、キャラクター
〇同性愛、残酷、ショッキング描写に注意(※人を選ぶ作品です)

目次

概要

ゲーム制作サークル『ミゼレーレノービス』によりRPGツクールMZで製作された中編RPG。殆どの素材が自作であることや独自性あるシナリオが特徴。本作は単体でも一応のエンディングを迎えるが、続編である『救済の魔女メモワールと精神迷宮』に繋がっている。プレイ時間は10~15時間程度。同性愛描写及び結構な鬱展開が待っているので苦手な人は回避推奨!

ストーリー

なお魔法少女といいつつ変身はしない模様

生きることに絶望していた少女まトちは、いつものように所持していた薬を大量に飲み、ふらふらとあてもなく街の外に出かけた。薬の量を間違えたせいなのか、そしてそのまま意識を失う…。

目が覚めたらそこはレヴィ―アイランドという不思議な空間だった。謎のマスコットキャラ『にゅ』によれば、メモリアというダンジョンの最奥まで行けば願いを叶えることが出来るらしい。しかし、ダンジョンの奥に進むにはダンジョンの管理人『ノイレ』の承諾または殺害が条件だという。

こうして相棒の女の子と共にメモリアを探索することになったまトちだったが…。

ノイレは色々なマップエリアに存在し、交流を深めることとなるが…

どこか情緒不安定なダンジョンの管理人『ノイレ』との出会い。徐々に明らかになっていくレヴィ―アイランドの真実。そしてまトちに隠された過去…。

果たしてまトちは、願いを叶えることが出来るのだろうか?

ゲームシステム

戦闘システム

エネミーグラフィックはなかなか個性的

戦闘はシンボルエンカウントを採用。オーソドックスなフロントビューのターン制バトルであり、RPGに慣れている人であればあまり迷うことは無いだろう。属性相性がやや特殊だが常に右上に表示されるため直ぐに慣れる。ちなみに戦闘参加可能人数は最大4人だが、ダンジョン突入前ならば控えメンバーとの交代も可能だ。

コマンドメニューで言うところの『イマジン』は魔法(MP使用)、『ロクト』はスキル(TP使用)と言い換えれば理解が早いだろう。特徴的なのが右上にある『BLOOD』の存在だ。戦闘を繰り返すごとに溜まっていき、消費することで様々な恩恵を得ることが出来る。BオフェンスやBディフェンスは攻撃力や防御力が増加し、Bヒールは味方全体を回復するといった恩恵がある。ボス戦やピンチ時などここぞというところで使用することを心がけよう。

ちなみに全滅すると拠点へ強制送還され精神崩壊度が溜まり、最大値に達するとゲームオーバーになるので注意されたし。更に本作は中々に難易度が高いことも付け足しておく。RPGに自信のある人は是非遊んでみて欲しい。意気揚々と難易度を高めて挑むと手痛い洗礼を食らうだろうから。1

強力な見た目と共に圧倒的な強さを誇る。遭遇したら逃げるしかない

ダンジョンを歩いていると、脈絡なく緊張感あるBGMに変化し猛スピードで襲ってくる敵シンボルが居る。それこそが『暴虐なるパラク』なる凶悪モンスターだ。こいつに遭遇すると勝つことは絶対に不可能。BGMが変わったらとにかくそのマップから逃げることに集中しよう。運悪く遭遇し全滅するとそのままゲームオーバーになるため中々にスリルがある。

サブクラスシステム

スキル習得順序や習得レベルは非公開であり、予測することしかできない

サブクラスという要素についても解説しよう。戦闘参加キャラクターは、戦闘で得る経験値のほかにJPも入手することができ、各サブクラスをレベルアップすることが可能だ。それぞれのサブクラスでパラメーターや特殊能力が異なったり、覚えるスキルが違っていたりもする。ボス戦など大事な戦闘ではボスの相性に合わせたクラスに変更するのがセオリー。

実はこのシステムが中々に曲者なのだが、それは気になった点にて後述しよう。

サズナ加入システム

ダンジョンの隠しマップを見つけないと仲間が増えない点に注意

ゲーム開始時はまトちしか戦えるキャラが居ないため、『サズナ』と呼ばれる仲間キャラを増やしていく必要がある。彼らを仲間にするためには、ダンジョンの隠しマップに配置されている『解放石』を使おう。御覧の通り、解放する前に仲間キャラの特性を参照することが出来るのでよく考えて解放しよう(やり直しは効かない)。

なお、仲間にしたキャラクターは全キャラ初期レベル1であり、ゼロから育成の必要があることに注意だ。そのあたりについても気になった点にて触れようと思う。

評価したい点

徐々にアンロックされていくまトちの過去…

独自性のあるストーリー&キャラクター

本作は数あるゲーム作品の中でも良くも悪くも個性的で他に類を見ない内容だと言える。個性的な登場人物に加えて、ストーリーが進むにつれ徐々に明らかになっていくまトちやノイレ達の過去、レヴィ―アイランドの真実、そして最後に訪れる衝撃のラストへとしっかり物語を描き切っている(まぁ続編には続くのだが…)賛否は分かれるだろうがここでは評価点として扱いたいと思う。こうした個性ある作品を楽しめるのが個人製作ゲームの良い点だし、刺さる人には刺さる作品であることは間違いない。

更に本作は続編へと続く作品であるため、続編を意識した伏線張りはもちろん、エンディングは賛否あるだろうがなかなか上手い構成になっている。ぜひこの記事を読んでる皆様にはエンディングを閲覧後に続編『救済の魔女メモワールと精神迷宮』をプレイ&クリアしていただきたいと思う。

ただしあくまで私は評価点として扱っただけであり、合わない人には絶対に合わない作品だということは念押ししておこう。先に述べた通りだが同性愛描写、暴力表現など人を選ぶ要素は多い。

まトち達だけでなくダンジョンの管理人『ノイレ』も何れも個性があり本作を彩ってくれる

自作素材にあふれた拘りある作品

フリーゲームには珍しくオープニングムービーもついている

本作のもう一つ大きな特徴として、エネミー、キャラクター、BGMが全て自作であることだ。それにより、フリーゲームあるあるなどこかで見た聞いたような音楽、エネミー、グラフィック2が登場することは無い。RPGツクールで作成されたゲームでオリジナリティを高めるのは中々難しいが、本作ではそれを高めることに成功していると言える。オープニングやエンディングムービー(歌付き)が付いているのもフリーゲームにしてはかなり珍しい部類だ。

無論自作であればいいという問題では無く、クォリティも十分なものだ。戦闘BGMや拠点BGM、各ダンジョンのBGM(学校エリアが特に好き)は中々印象的だし、グラフィックに関してもデザイン性は十分だし、UI全般もツクールのデフォルトから脱却できているように思う。強いて言えばエネミーグラフィックに死にたい/殺すなど文字だけのエネミーが多く居ることが多少気になったくらいだろうか。

気になった点

ゲームバランス面

正直なところ、難しい/簡単とか難易度以前にバランス面で今一つ遊び辛い点があるのは否めない。

まず仲間キャラ(サズナ)に関してだが、隠しマップの解放石を入手しないと仲間を一切増やせない仕様はRPG初心者には少々辛い仕様3である。加えてサズナは一律レベル1で加入するうえにダンジョン内で仲間を交代できない制約があるため、余程のことが無い限り最初に仲間にした3人+まトちの4人で攻略することになるんじゃなかろうか。サズナは最大で8人居るのでもっと色々なパーティを試してみたかったのが本音である。

次に気になったのはサブクラスシステム。FF5のジョブアビリティシステムを彷彿とさせるものだが、実はごくごく一部のサブクラスを除きパラメータや特殊能力に大きな差は無い。結局はスキル習得のためだけに存在するシステムのように感じてしまった。それに何より残念だったのはサブクラスのスキル習得順序や習得レベルが非公開である。次にどのレベルで何を覚えるかが不明なまま成長させるのは正直しんどい。

戦闘テンポについても今一つのように感じた。ゲーム終盤までろくに全体攻撃を覚えない設計であること、全体的に敵の回避力が高めで攻撃ミスが目立つこと、多くの敵が頭部欠損のステータス異常属性(つまり即死)を所持していることが要因だと私は考えている。

ただし擁護させてもらうと、これらのバランス面の不満は続編である『救済の魔女メモワールと精神迷宮』ではほぼ全て解消されているので、続編に懸念を抱いているかたは安心して欲しい。素晴らしい対応力。

【攻略情報のネタバレ注意】ゲーム攻略のヒント【クリックで展開】
  • アイスキルを存分に活用しよう。危なくなったらセーブ OR ダンジョン脱出を。
  • ダンジョン内はマップを切り替えるたびに無限にアイテムが湧くのでまず戦闘より装備を強化しよう。
  • 慣れると敵シンボルには簡単に背後を取れて先制攻撃出来る。有効利用しよう。
  • 先制攻撃を取って逃走を繰り返せばアイテムだけ一方的に回収しダンジョンを進める。
  • 敵シンボルとの接触の際の無敵時間を上手く利用しよう。暴虐なるパラク対策にも有効。
  • 実はマップを見て進むより左下のガイドマップを見ながら進む方が安定する(と思う)。
  • 詰まった時はゲームフォルダ内のreadmeを参照しよう。ただしネタバレを含むので注意。

総評

鬱要素、暴力、ショッキング表現、同性愛描写と人を選ぶ要素は多いがその中身は意外にも大変しっかり作り込まれたRPGであることに色々な意味で衝撃を受けた。バランス面で思うところはあれど、刺さる人には刺さるという言葉が似合うフリーゲームらしさに溢れた作品だ。本作を楽しめた人はぜひ続編の『救済の魔女メモワールと精神迷宮』もプレイして欲しい。

ゲームプレイリンク

Freem!

救済の魔女メモワールと精神迷宮(フリー版)

救済の魔女メモワールと精神迷宮(有料特典版)

脚注

  1. とはいえ劇中でも語られているが、腰を据えてしっかり戦えば攻略出来る仕組みになっている。 ↩︎
  2. 決してフリーゲームを悪く言うつもりはないが、フリー素材の仕組み上どうしても避けられない。 ↩︎
  3. 本作自体がRPG初心者にはオススメ出来ないので、ある意味バランスは取れていると言えるか ↩︎
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