
概要
ストーリー

行こう――この閉ざされた空の向こうへ。
還力の発見と共に人類が栄えた時代旧世界は、突如出現した怪物ゴグマ達によって終わりを迎えた。
文明が崩壊してから数千年後、人類は空へ逃げた天空人と地上に残された地上人に分かれ、存続していた。
天空国家で恵まれた生活を享受する天空人と、地上でゴグマとの終わらない戦いを強いられる地上人。
その差は明確で、互いに見下し敵視するのは当然であった。

ある日、地上人の少年リクディオが空から落ちてきた天空人の少女ソラハリアを拾った事で物語が動き始める。ちょっとした事情から二人は共に旅をし、人類の生存を懸けてゴグマとの戦いに身を投じる事になる。
地上人の少年と天空人の少女が世界を巡り、ゴグマと戦う長編ボーイミーツガール冒険RPG!
――これは、無垢なる意思の物語。
ゲームシステム
オーソドックスなフロントビューのターン制バトル

本作はドラクエなどでお馴染みのターン制フロントビューの戦闘システムを採用している。また、近年のRPGではお馴染みのシンボルエンカウント制を採用している。ちなみにRPGには珍しく逃走成功率100%である。大長編で相当数の戦闘をこなさなければいけない本作ではありがたい救済措置である。
次に本作の難易度だが、高くもなく低くもないバランスという印象だ。ある程度RPGの心得がある人なら、適度に装備品を整えサブイベントをこなしていれば、多少の苦戦はあれど普通にストーリーを進行することが出来るはずだ。ハードモードも用意されているので、高難易度を求める人は設定してみよう。
ちなみに本作は戦闘中フルボイスである。なかでもシナリオ進行上で特に重要なボスにはボイスが付いていたり、戦闘中に発生する会話イベントまでもがフルボイスだったりする。
次に、本作独自の戦闘要素を紹介しよう。
残留闘技
ストーリーが進行すると使えるようになる要素。画面中央に炎3や氷2といった属性アイコンと数字が表示されているのが分かるだろう。これらの数値は各種属性の術を使うたびに増減していき、これらの属性アイコンの数値が一定の条件を満たしている場合(例: 水>火)、追加でスキルが発動するというものだ。残留闘技が発動する属性条件は他にも色々あり、重複可能なため、なんと最大で4連撃を叩きこむことも可能だ。
とはいえ敵との属性相性や戦闘局面の都合もあり、無理に狙わない方が良い場合もある。発動したらラッキー程度に考えておいて良いだろう。残留闘技を発動することばかりに気を取られてペースを崩すくらいなら全力で戦った方が早かったりする。
ウィークシステム
特定の属性に弱くなる状態異常のこと。この状態異常になった敵に弱点攻撃を当てれば更にウィークレベル1からウィークレベル2となり効果がアップ。(よく似ているが)属性耐性低下の状態異常とも両立するため、その場合ダメージは更に加速する。スキルによっては、敵のウィーク状態で攻撃力が上がるものもあるので上手く併用しよう。
バウンズブレイク
TPが100溜まるとバウンズブレイクを発動することができる。3ターン自身の戦闘能力を向上することができ、更にその状態で特定の特技や術を使うことで超必殺技を発動することが出来る。RPGの要素としては有り触れたものだが、本作ではストーリー中盤以降に更なる超超必殺技を習得することが可能だ。ストーリーの盛り上がりに呼応するように専用カットインイラストが表示されたりもするので、是非その目でご覧いただきたい。
その他ゲームシステム

RPGでは定番お馴染みのサブイベント。本編を進めながら息抜きとして沢山のイベントが用意されている。特定の人物に話しかけるだけで完了するものから、お使いのように手間を取らせるものまで様々だ。サブイベントと侮るなかれ、アイテムや装備品がもらえるほか、寄り道ダンジョンに挑戦できたり、中には固有スキルを習得できたりもするので、時間の許す限り片っ端からサブイベントを消化していきたいところ。
なお、寄り道ダンジョンは通称『魔境』と呼ばれている。人類が栄えた旧世界の残骸が残っていたり、本編と少なからず関連性のあるイベントが発生したりもする。レベル上げついでに攻略するのも良いだろう。
ちなみに本作が大長編な作品ということも手伝いサブイベント総数は100個以上とかなり多い(ちなみに魔境は50個以上)。このサブイベントの仕様/構成には少々思うところもあり、気になった点にて後述する。
評価したい点
数多くの伏線に裏打ちされた、大ボリュームで評価の高いシナリオ構成

本作を遊んだ人なら、本作の魅力が何かと聞かれたら間違いなく『シナリオ』と即答することであろう。ご多分に漏れず私もそのクチである。物語序盤の展開だけ見ると、天上と地上に分かたれた二人が出会ったことをキッカケにして、世界の脅威であるゴグマを倒す旅に出る物語と実に王道っぽいのだが、しかし、この物語はその一言では片づけられないほどに紆余曲折あり、数多くのドラマの末に驚きの結末へ到達する。
また、本作はさすがの大長編ストーリーなだけあって、とにかく序盤だけでも相当数の専門用語だったりミステリーな要素がぶち込まれ物語が進行していく。ざっと挙げると下記のような感じだ。
○天空国家で恵まれた生活を享受する天空人と、ゴグマとの終わらない戦いを強いられる地上人。
○リクディオだけが持つ異能『拒絶の右腕』とソラハリアだけが持つ異能『自由の翼』の正体。
○ゴグマを討伐する職業『セトラ』と、一流のセトラにだけ与えられる称号『討魔刃』。
○愛や力、哀しみ等を司る、かつて世界に存在したと言われる神の名を基に広がった『五神教』。
○かつて実在したと言われる聖人の名前にちなんだゴグマ討伐部隊『マールド征伐団』。
○新人類に災厄と言えるほどの被害を巻き散らした『異戒天魔』とその手下『欠落の凶音』。
これだけでも中々の情報量だが驚くなかれ、これらの要素はまだまだゲーム序盤(といってもこれだけでゆうに10時間は超えているのだが…)に開示される情報であって、中盤以降では更に多くの要素が介入し物語が加速していく。そしてそのぶん、登場人物もかなり多い。あと専門用語が結構中二病っぽい。
そして何より、本作は長編なだけあって伏線を張るシーンも何かと多い。何かと含みを持たせ意味ありげなセリフを言うキャラが多く、特に序盤はそういったシーンが目立つ。

正直言うと著者はこれだけあちらこちらに伏線を張ってちゃんと回収できるのだろうか?とすら思っていたが、その心配は杞憂に終わった。この長い物語の末に最終的には全ての伏線が回収され完璧なエンディングへ辿り着く。沢山の伏線が回収され、当時の状況、行動、言動、態度、それらのすべてを理解できたときのカタルシスはなかなかのものだ。
伏線投げっぱなしで終わるような商業作品もあるなかで、これだけでもシナリオ構成としては十分なのだが、本作のシナリオにはもう一つ欠かせない要素がある。と同時にこれこそが本作が名作たらしめる理由でもある。
ボーイミーツガールな要素も持ち合わせている

本作のシナリオが評価されるのはこの点も大きいだろう。公式サイトや作者が宣伝しているので私も隠さず言及するが、本作はボーイミーツガール的な要素も大きい。ここで改めてその意味を解説すると『物語の主人公(少年)が少女と出会い、恋に落ちて関係を育んでいく展開』をあらわしている。本作でいうところの少年と少女はもちろん、物語の主人公、リクディオとソラハリアのことだ。こういった要素を全面にPRしているRPGは少々珍しい印象である。
しかしこれにはちょっとした罠があり、実のところ天空人の地上における扱いやリクディオの性格の問題、ソラハリア自身が抱えている事情もあって、物語序盤はそんな気配はほとんど無い。だが、ストーリーを追っていくごとに少しずつ、少しずつだが、確実に二人は惹かれ合っていく。

物語序盤はお互い損得勘定で動いていた面もある二人(正確に言うと多少語弊があるが)だったが、ゲーム中盤以降になると少しずつお互いを認め合い、仲間と共に立ちふさがる障害、悪意を乗り越えていく。そうして芽生えていく二人の絆を見るのはとてもハートフルであり、実に心温まるものであった。言い換えれば、この要素を楽しめなければ本作に入れ込むのは少々難しいだろう。
個人的には物語の転換点となる第5章~6章や、クライマックスである第10章の物語は必見だ。前者は著者が最後までこの物語を見届けようと決意したキッカケとなったイベントだし、後者はこの物語の1つの終着点と言ってよく、恐らくは作者が強く描きたかったシーンなのだろう、と印象付けた名シーンだ。複雑なシナリオの大筋にボーイミーツガール要素を上手く入れ込んでおり、シナリオを辿ることが結果的にそういった関係になるよう上手く工夫しているのだ。
なお、作者のまむ氏いわく第1~2章がチュートリアル。3章が序盤。4章が中盤の入り口という印象だそうだ。ローマは一日にして成らずではないが、恋愛感情も長い時間をかけて醸成していくことが大事なのだろう(同時にファンタジー要素も描かなきゃいけない)ただ、それはそれで少々気になった点でもあるので、後述する。
ところで、こうして主人公の少年と少女が出会い惹かれ合う展開があるJRPG作品は他に何があるだろう?とふと思い立ってみたが、意外と出てこないものである。該当するのはファイナルファンタジーⅧやファイナルファンタジーⅩあたりだろうか?はたして、皆さんはどんな作品を思い浮かべるだろうか?そういった作品と本作を比較し、推古してみるのもまた、面白そうだ。
あくまで主役はこの二人、しかし…

本作がリクディオとソラハリアを中心に動く物語と言うことは様々な点で示唆されている。実際のところ著者も二人がお気に入りなのは変わらないが、他にも好感が持てるキャラが多数存在する。そんな彼らに焦点を当てたイベントシーンもたくさんあるのでそういった物語も楽しんで頂けると幸いだ。序盤は好きになれないキャラだったとしても、シナリオが進行していくにつれて真相が判明したり、そのキャラが成長していく姿を見てだんだんと好きになっていく。これこそ長編RPGの醍醐味と言えよう。
ちなみに著者の好きなキャラはカルテマ、セナレーノ、バギラド様あたりだろうか。正直言うとあと5人くらいは名前を挙げたいのだが、ここではネタバレ配慮のため割愛したい。シナリオが魅力のRPGであるがゆえ、可能な限りまっさらな状態で本作を遊んでいただきたい。
あらすじのチェックもオススメ

著者もそうだったが、本作は大長編であるが故にストーリーが複雑でよく分からなくなることもある。そんな人はぜひこのあらすじを振り返って欲しい。しかも単にストーリーをなぞっているだけではなく、それぞれのエピソードに語り手がいるのがポイント。シナリオ進行中には話さなかった語り手の本音・秘めたる想いが込められているのだ。そのため、一通りシナリオを進めたらおさらいを兼ねてあらすじを読んでおくことをオススメする。SkyAndEarthという作品をより深く理解することが出来るであろう。ちなみにあらすじ以外にも専門用語の紹介などもあり、理解を助けてくれる。
クォリティの高いグラフィック、楽曲やムービー、声優陣

本作はゲームシステムやマップといったみてくれの要素こそRPGツクール製の印象が強い。ただその一方で、オリジナリティを出すため別の点に力を入れていることを紹介しておきたい。
まずはグラフィックだ。ここまでに紹介したようにストーリーの合間、合間に描きおろしイラストが挿入され物語の没入感を高めてくれる。とくにゲーム終盤ではストーリーの盛り上がりどころでカットイン的に挿入されることが多く、プレーヤーのボルテージが上がること間違いなしである。当然ながらネタバレを含むためここでそういったイラストを紹介できないことに残念な気持ちさえある。
しかも戦闘では声優起用によるボイス付きで攻撃、術、特技を使い分け、色々な場面でたくさん喋ってくれる。驚くべきは主人公サイドだけでなく一部のボスにも声優が起用されているばかりか、重要な戦闘では戦闘時の会話も含めてフルボイスで展開されるのだ。声優陣の方々は概ねイメージ通りで雰囲気を壊すようなことは無かったと思う。おかげでキャラへの愛着が湧き、ストーリーの盛り上がりに相乗効果が得られたように思う。
楽曲も良曲揃いだ。ただ書いただけでは具体性に欠けるため、参考までに私の好きな曲の一部をリストアップしよう。フィールドテーマの『黄昏に染まる世界で』はクライマックスにふさわしい壮大な曲。バトルテーマもカッコいい曲が多く、『Pour_Fuel_On_The_Fire』、『裁く者』、『good_night_dear_maria_arrange』、『この閉ざされた空の向こうへ』などが私のお気に入りだ。エピローグテーマの『君との道』は心に染み渡る良曲であり、ここだけの話この曲を聴き思いを馳せながら本記事の執筆に取り組ませていただいた。こうして見返すと多くの良曲に巡り合えた。本当にクリアして良かったと思う。もちろん本作は大長編作品ゆえこれ以外にも多くの楽曲が使われているので、きっとあなたの好きな曲が見つかるはずだ。
ちなみにこれらの多くは『本作オリジナルBGM』扱いであり本作でしか聴くことが出来ない。なるほど印象に残りやすいわけだ。強いて残念なことを挙げるとすれば私の気に入ったBGMはとことんゲーム中盤~終盤でしか流れない点だろうか。
気になった点
プレイ時間が長い
上述したように評価したい点は沢山あるものの、率直に言うと気になったことも色々とある。まず、本作はゲームプレイ時間が商業作品群と比較しても相当に長い部類であり、さすがに道中で中だるみを感じてしまった。参考までに著者は5章(25時間程度)でハマり始めたが、言い変えるとそれくらいは遊ばないと本作の良さは見えてこないように思う。
まずはシナリオ面だが、評価点に書いたようにトータルのシナリオのデキは素晴らしく、それは間違いない。ただ、大風呂敷を広げたように壮大なのは良いにしても、少々広げ過ぎたのでは?と思う場面も無くは無い。具体的に書いてしまうとネタバレになるので避けるが、ゲーム後半に登場する一部キャラ達は正直、あまり印象に残っていない。プレイ時間40時間経過してさらに新キャラを多数投入される展開は脳が疲弊してしまい、蛇足感を感じたことは否めない。
ほかにも、プレイ時間が増える要因になった要素を下記に記す。
サブイベント/魔境(寄り道ダンジョン)の扱い
前述した通り本作はサブイベントの宝庫と言って良いくらいサブイベント(魔境含む)が多い。会話しただけで終わるサブイベントも多いのだが、お使いのようにあちこち移動させられたりして時間を労することもあった。これだけサブイベントが多いにも関わらず、サブイベントのトリガーになる人物に対し特に何も印やマークが付かないので迷うことも多かった。魔境に関してもレベル上げポイントの役割もあったのだろうが、ダンジョン攻略にそれなりの時間がかかってしまう。
少々言い難いが、本作の魅力はシナリオなのだからここまで数多く設置しなくても良かったのでは…と思ったりもした。じゃあ寄り道しなければ良いのでは?という声も聞こえてきそうだが、未クリアのダンジョンやサブイベがあったら処理したくなるのがゲーマーのサガである。異論は認める。
マップ構成
本作のマップは結構広く、特に大都市は [ 宮殿→お城→城下町 ] という巨大構造になっており、メインシナリオ/サブイベント等で宮殿に出向くだけでも結構時間を取られたりする。サブイベントで宮殿に足を運びイベントを終え都市を出たら、実は別のサブイベントがお城で発生していた、などといったケースもあり少々憂鬱になったものだ。
ただ、誤解しないで欲しいのは、デカいマップを作るななどと野暮なことを言っているのではなく、ストーリー進行の都合で何度も行き来することになるのだから、ショートカットは設置して欲しかった。というのが本音である。こういった要素も塵積でプレイ時間が増える要因だったと思う(クリア済みダンジョン再訪といったシーンではショートカットが用意されていたりはする)
ほかにも、これは長編作品であるがゆえの弊害であろうか。特にゲーム序盤はダンジョンの構成がどれも似通っていてマップ散策の面白味を感じられなかった。これは魔境をはじめ大量のダンジョンが用意されていることも少なからず影響していると思う。
ゲームシステム面への波及
上述したように本作のゲームシステムはシンプルそのものだ。それだけであれば別にマイナスでは無いのだが、トータル50時間を軽く超えるRPGにおいては、さすがに戦闘をこなすのがワンパターンというかマンネリズムを感じてしまうことは否定できない。一応、ゲーム中盤以降は主人公たちの特殊技能が強化されるだとか、ボス敵の特殊攻撃が苛烈化する、新メンバーが増えるといった要素が追加されるなどするが、根本的な要素は変わらない。そういう面もあり、著者はゲーム中盤以降は雑魚戦は逃げるようにしていた(そういう意味では逃走成功率100%は非常に有難かった)
戦闘参加キャラがほぼ固定というのも悩ましい点だ。シナリオ都合にてゲストキャラが加入するなどしてパーティメンバーが変更されることはあるがそれはあくまで一時的なもの。つまり実質的にパーティ入替は無い。ボスの戦術に合わせて戦闘参加キャラを交代するといった楽しみは本作には無いのだ。
総評
冒険ファンタジーな要素とボーイミーツガールな要素が合わさった完成度の高いシナリオには一見の価値あり。オリジナリティを高めるため戦闘ボイス、オリジナルイラスト、OPムービーにエピローグテーマを用意するなど確かな工夫がある。ただしその反面、気になる点も多くあったのは事実である。それでも私はこの物語の結末を見届けることが出来て良かったと思う。そう思わせるだけの魅力が本作にはあるのだ。
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