
概要
ストーリー

勇者志望の剣士「ガルン」は、ある日決定的な事実に直面する。
この世界で勇者の称号を得るには、神から授けられる条件【神託】を達成しなければならない。
ガルンが受けた神託、それは――「彼女を作れ」というものだった!
勇者になるため、不器用すぎる青年ガルンは、腐れ縁の親友レイナスを巻き込み、彼女を求めて各地を爆走する!
ゲームシステム
独自のダンジョン探索システム

本作はRPGツクール製のRPGには珍しくフィールド、ダンジョンといったマップが存在しない、言わばマップレスRPGである。ダンジョンに突入すると各ボタンで自身の行動を入力。前進すると右上にある踏破値が増加し、一定数に到達するとボス戦に突入。討伐するとそのダンジョンはクリアという仕組みだ。
特徴的なのはただ前進をするだけでも雑魚戦の発生はもちろん、道中でキャラクターとの雑談が表示されたり、宝箱入手や回復といったイベントがイラスト付きで差し込まれたりとプレイヤーに飽きさせないような工夫が見られることだ。他にも敵との戦闘に苦戦している場合は相談でモンスターの特徴や倒し方を教えてくれるし、敵呼びでレベル上げに励むこともできる。
次に、戦闘システムの紹介に移ろう。
オーソドックスなフロントビューのターン制バトル

本作はドラクエなどでお馴染みのターン制フロントビューの戦闘システムを採用している。特徴的だったダンジョン探索システムと比較するとオーソドックスな印象が感じられる一方で、本作ならではの幾つか目を惹く要素もある。例えばターン制RPGには珍しく行動順/敵の行動内容がすべて分かるのもその一つだ。
ちなみに本作の戦闘難易度だが、RPG初心者向けに設計されたのかだいぶ優しい難易度だ。なんだったら経験値4倍オプションもあるので前述の敵呼びも駆使することで簡単にレベル上げができ、誰にでもゲームクリアできる仕様になっている。それと一切レベルが上がらない経験値0倍オプションも選択できるので縛りプレイが好きな人はどうぞ。
次に、本作独自の戦闘要素を紹介しよう。
ブースト

ガルンとレイナスの二人は行動のたびにBPが貯まっていき100に到達すると『ブースト』を使用することが出来る。独特なカットインイラストが表示されるとともに、様々な強力な恩恵 [ ダメージ無効化、各能力値大アップ、HPMP大回復 ]を受けることが出来る。その効果は絶大であり、戦況に合わせて使うことでピンチを脱したり通常の何倍もの打撃を与えることができたりとプレーヤーのセンスが問われるところだ。
召喚獣

召喚獣というシステムも面白い。通常時は戦闘参加メンバーは二人だけと味気ないものだが、召喚を駆使することで最大で4人まで手数を増やすことが出来る。回復特化、打撃特化、状態異常特化、バランス型だったりいろいろな召喚獣がいるので試行錯誤しつつお気に入りのパーティを構築しよう。
思うに、一般的なRPGにおける召喚獣の役割とは、主にFFシリーズで起用されダメージを与える一度きりの手段だったり、代わりに戦ってくれるものだった。意外にも今作のようにパーティメンバーに加入して一緒に戦ってくれる仕組みは初めて目にしたものかもしれない。召喚獣という言葉こそあれ、実態は女神転生シリーズに近いだろうか?
評価したい点
テンポの良いサクサク進む漫才のようなギャグシナリオ

本作の特徴として外せないのはこの点だろう。カオスでシュールなギャグが魅力の『ビート・チェリー・クエスト!』でお馴染み、楽月レイ氏による渾身のギャグシナリオはかなりテンポが良い。まるで漫才を見ているような感覚すら覚える。ギャグシナリオのオチもしっかりと用意されており、短いながらも起承転結のある物語と言えるだろう。一応ギャグ一辺倒ではなくシリアスっぽいシーンもある。9:1くらいの割合で。笑える作品を遊んでみたいという人にはお勧めだろうか。
ただ個人的にはこのギャグシナリオに思うところもあり、気になった点にて後述する。
独自性があり拡張性を感じられるゲームシステム

ゲームシステムにも魅力を感じられる。こちらはゲーム性が高く評価された作品『タナトスチェイサー』『ハイテンダンジョンRTA』でお馴染みのプラカヴィ氏によるシステム設計である。召喚獣や最大5つの装飾品装備、ブーストによる能力上昇を組み合わせることで戦術の拡張性が高まるゲームデザイン。うまくハマれば大ダメージを出せる設計はさすがのプラカヴィ設計だと感心したものである。一方で経験値0倍のやり込み要素も提供してるのでマニアなプレーヤーにも配慮している。
独自のダンジョン探索システムも面白みを感じる設計だ。RPGツクールの作品と言えば2Dマップが定番だが、うまく作らないと良くも悪くもツクールっぽさが出てしまい、悲しいかなツクール臭と揶揄されたりすることもある。一方でこの方式であれば最小限の組み込みでダンジョンを構成でき、マップを作る労力を抑えられる。もちろんただ手を抜いているのではなく、代わりにイラストも豊富に用意しており探索を楽しんでほしいという意図が感じられる。歩きながら味方との会話が弾むUIも良く出来ている。
とはいえこちらも思うところはあり、気になった点にて後述する。
気になった点
ギャグ設定の土台がやや弱いか
本作のギャグポイントは何が何でも彼女を作りたいという想いで暴走するガルンとそれにツッコミを入れる親友レイナスという構造である。しかし、元々真面目な性格のガルンが神託で告げられたのだから躍起になり周りが見えなくなるのは自然なのでは?と思う納得感があり、ギャグ設定の土台が少し弱いように感じられた。私がそうであったように、人によっては刺さらないかもしれない。
また、これは個人的な意見ではあるが、同氏制作でぶっ飛んだギャグが人気を博した『ビート・チェリー・クエスト!』とどうしても比較してしまう。こちらは乳首に異常な執着を持つ男という強いギャグ設定の土台があり、むしろカオス・シュールな類の笑いを生み出していたのだ。どうやら私はこういったタイプの笑いの方が好きらしい。
ゲームシステムの拡張性の弱さ
本作は評価点に述べたように独自のダンジョン探索システムに加え、召喚獣、最大5つの装飾品装備、ブーストといったシステムが存在するのだが、いざ遊んでみると今一つ活かせていないように思えてならない。
まず本作はサクサク進めるゲームバランスなのだが、そもそも難易度が低いからこそ成り立っている面がある。せっかく用意されたゲームシステムも装備や戦術を少し工夫するだけで簡単に突破できてしまう。難易度選択は無く経験値4倍オプションもあるので尚更だ。一応そうした物足りない人向けに経験値0倍オプションもあるのだが、これは一種の縛りプレイのため苦手な人も居るかもしれない。自分がそうだからだ。
さらにいうとノベルやアクションゲームならともかくRPGでプレイ時間が2~3時間というのは控えめに言っても短い。せっかく拡張性あるシステムなのに、上述の難易度の件はもちろん、そもそもアイテム総数やダンジョン、戦闘が少ないので試行錯誤の楽しみを感じる前にクリアしてしまうのは残念であった。
ダンジョン探索ももう一声
基本的にダンジョンのゴール到達値は100で固定。いざプレイしてみると分かるが、ただ前進していれば割と直ぐにゴールに到達できる。というのも、発生するイベントは雑魚戦闘、宝箱入手、回復と計3つで少々物足りない。それに加えてもともと難易度が低いため、本来であれば重要足りえる相談による雑魚の対処方法もあまり参考にならない。せっかくのダンジョン探索なのでマップ分岐や天気天候の変化、罠、強敵との遭遇などイベント分岐を組み込むなどただ歩くだけじゃなく何かしら一筋縄ではいかない要素が欲しかったところだ。ダンジョン探索のUIや構成はよくできていると思うので勿体ない印象を持ってしまった。
これも個人的な意見ではあるが、プラカヴィ氏は『タナトスチェイサー』『ハイテンダンジョンRTA』をはじめゲーム性の高い作品を提供してきた経緯がある。沢山のアイテムやら武器防具スキルから攻略の最適解を試行錯誤する楽しみが同氏制作の魅力である。ただ、今作は難易度を抑えた短編サクサクRPGというコンセプトであったため、いまいちボタンの掛け違えというか、勿体なさを感じてしまったのが正直なところである。
総評
ギャグシナリオやオリジナルイラストを担当した楽月レイ氏、ゲームシステム全般の作り込みを担当したプラカヴィ氏。それぞれの担当範囲の特徴が出ている作品であり、共同制作をしたことが良く分かる一作である。RPG初心者やギャグを楽しみたい人にはおススメしたい。その反面、同氏の過去作品を遊んだ経験のある身としては、二人の良さを最大限に活かし切れなかった作品ではないかと訝しんだことも事実である。
ゲームプレイリンク
公式サイト
PLiCy
フリーゲーム夢現
参考ブログ


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