『ひのせせらぎ』レビュー|美しい映像と哀しい物語が心を揺さぶるフリーゲーム映像作品(見るゲ)

〇ゲーム性は一切無く、決定ボタンを押すだけで物語が進行する、通称見るゲ
〇2Dドット絵で滑らかに動く映像美と美しい楽曲が織りなす映像作品
〇儚く、哀しく、暖かく、苦しく、慈しい、数多の感情を揺さぶる壮大な物語

目次

概要

『ひのせせらぎ』はeueu氏によってVIPRPG紅白2023のエントリー作品として公開されたsteam2003製の作品である。出典こそVIPRPG作品ではあるものの、それ特有の要素は一切無く事前知識無く遊ぶことが可能。ジャンルもRPGどころか見る/読むことに特化した、通称『見るゲ』なのが最大の特徴。総プレイ時間は約3~4時間。

ストーリー

全く状況を把握できないルカ。そして障子の扉が開く

・・・お母さん
どこに行ったの・・・?
お母さん・・

霧の濃い森の中で母親とはぐれてしまった少年『ルカ』は、ついに行き倒れて意識を無くしてしまう。そして目が覚めると、そこは誰の家とも分からない民家であった。

怯えるルカに対し敵意を見せず穏やかな表情と言葉で歩み寄る女性

少年を介抱した女性の風貌は明らかに人ではなく、頭に角を生やし、特異な耳に尻尾も生えていた。彼女は、自身のことをルカたち人間が『鬼』と呼ぶ生き物であることを明かす。

これまで見たことも無い異形の存在に怯え後ずさるルカ。しかし彼女は優しく微笑み、敵意が無いことを伝えたばかりか、森で倒れた後遺症で下半身が上手く動かないルカを献身的に看病する。いつかルカが村に帰れるように、また必ず母親に会えるであろうことを願いながら…。

そんなルカもまた、鬼である彼女のことをすっかり信頼し日々を過ごしていた。

鬼はルカに何を語るのか…

しかし一見すると平穏に見えた日々は長くは続かなかった。ルカは日々を過ごすうちに芽生えた小さな疑問から自身の周囲を調べ始めた。そして彼の疑問は少しずつ、大きな、大きな疑念へと変わっていった。

隠し通すことが出来ないと観念した鬼の女性は、ルカに全てを話すことを決意する。
ここに至るまでの、悠久とも言える、長い、長い、昔話を———

ゲームシステム

とくになし

見るゲという作品だけにビジュアルや音楽も目を見張るものがある

冒頭の概要で伝えたとおり、本作は『見るゲ1』というジャンルであり、全てのイベントは決定ボタンを押していくだけで全て自動で進んでいく。キャラクターを操作することも無ければ、選択肢すらも発生しない。ゲームに必要なのはボタンを押すこと、ただそれだけなのだ。

それってノベルゲームでは?という声もあるだろうが、これらの作品をそう表現するのも何か違う気がすると私は思う。あくまで『見て楽しむRPGツクール製ゲーム』であり『ノベルゲーム』とは一線を画すジャンルだと断っておきたい。まぁここまで来るともはや映像作品と言っても差し支えないが、兎に角『見るゲ』なのだ。私はこれまで色々なゲームを遊んできたのだが「こういった表現もあるのか」と感嘆した次第である(純粋なゲームとして分類して良いのかはさておき)

なお、10~20分ごとにセーブ画面が出現するため、ぶっ通しで遊ぶ必要は無いので安心して欲しい。

評価したい点

——なんと儚く、美しく、そして哀しい物語なのだろうか

ルカの母は森で生き別れた息子に何を想い、何を願うのか…

私が本作を最後まで遊んで、いや視聴して感じたこと、それは自身に降り注ぐ数多の感情の数々だった。本作の物語は沢山の感情を呼び起こす大変エモーショナルな作品であり、そこには儚さ美しさ暖かさ哀しさ慈しさ陰惨さなど凡そ人間が経験する感情の多くが凝縮されているのだ。特にゲーム終盤からエンディングに向かう展開は物語のクライマックスであり、一連の描写が大変素晴らしかった。脚本についても細かい台詞一つ一つに意味があり、見返すとハッとするようなシーンで溢れているのだ。

ネタバレを避けているため多くは語らないが、本作は鬼が全てを語り始めるあたり2が物語の本番である。逆に言えば序盤は物語の展開がややゆっくりであるため少し退屈に感じる人も居るかもしれない。どうかそこで止めず、最後まで見届けていただきたい。この物語の結末を知っていただきたい。

万人受けする作品かと言われると…

と、ここまで熱く語っておいてしまってなんだが、実は本作は誰にでもオススメ出来る作品とも言い切れない。先に述べたように本作では様々な感情を掻き立てられる作品ではあるが、それは美しく暖かい前向きな感情だけでなく、辛く哀しい後ろ向きの感情もあるのだ。

よって、公式では年齢制限の類は謳われてはいないが、本作はR-15あたりが妥当であると私は考えている。本記事を読み、本作を手に取ろうと考えている人はこのあたりも考慮していただけると幸いだ。

一見するとプレイ時間は短めに思えるが…

ここでプレイ時間についてもここで言及しておきたい。私はプレイ時間が4時間ほど掛ったが、台詞を読むのが早い人は恐らく3時間程度でクリア出来る。コレは一般的なゲームのプレイ時間としてはやや短めな印象を持つ人も居るだろう。

ただ、それはあくまで一般ジャンルの作品に限って言えばの話だ。

ゲーム部分をバッサリ切り離して物語だけを羅列したとしても3~4時間も楽しめる。言うならば一つの映画を観るようなものだ。映画の上映と考えればこのプレイ時間を短いと思う人は恐らく居ないだろう。本作は想像した以上にボリュームに溢れる作品なのだ。

その映像美はまさに見るゲの真骨頂

ときおり表示されるイベントスチルは美しく、見るゲとしての没入感を存分に高めてくれる

本作は映像や脚本、楽曲が素晴らしく、ところどころでその真価を垣間見ることが出来る。作中では上図のような美しいイベントスチルはもちろん、ちょっとした演出や表情の変化をとても丁寧に描いている。これだけの立ち絵やらドットアニメーションの用意はさぞ大変だっただろうに。

なお、本作はどちらかと言うと『静』の印象を受けるだろうが、さらに物語が進んでいくと「これぞ見るゲ」とばかりに息を飲むようなドットアニメーションも展開していく。これでプレーヤーはより一層物語に没入していくことだろう。こういったメリハリがあることも本作を評価したい理由のひとつだ。

総評

目を奪われる映像美に、激しく感情を揺さぶられる物語と脚本。自身では初めての見るゲだったがまさかここまで引き込まれるとは思わなかった。ボリュームも想定した以上であり満足感のある視聴体験であった。万人にオススメ出来るとは言いづらいが、それでも多くの人にオススメしたい作品だ。

ゲームプレイリンク

VIPRPG@WIKI

脚注

  1. このジャンルがどこから生まれ伝わったのか私には正直良く分からないが、恐らくVIPRPGが出典なのだろう ↩︎
  2. ここまで、プレイ時間は凡そ1時間といったところか ↩︎
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